ここだけの話、嫌なことがあっても人に話しちゃいけません

ここだけの話なのですが、嫌なことがあっても人に話しちゃいけませんよ。
あ、別に、ぼくがあなたに起こった嫌な出来事を聞きたくない、というわけではありません。もちろん、愚痴や文句なんて誰も聞きたくないでしょうが、それとはまた別の話。実は……、

「問題を話せばスッキリする」というのは、ウソだったのです。

話しても話さなくても変わらない

リチャード・ワイズマン博士『その科学が成功を決める』(文藝春秋)によると、 2005年にベルギーのルーヴァン大学の心理学者、エマニュエル・ゼックとベルナール・リメがやった実験からわかります。

2人は実験参加者たち全員に対し、自分の体験から「最も精神的に苦痛だったこと、いまも忘れることができず、人に話す必要を感じるできごと」を選び出すよう指示します。
そして、1つ目のグループには、その辛いできごと――身近な人の死から離婚、病気から虐待まで――を話してもらい、2つ目のグループには、その人のごく典型的な1日の過ごし方について話してもらいました。つまり、第1グループが「悩みを打ち明ける」グループ、第2グループが「悩みを話さない」グループ、ということになります。

ゼックとリメの2人は、1週間後と2ヶ月後に実験参加者全員を集め、その時点で感じている幸福感についてのアンケートをとりました。
その結果、悩みを話したことで、何かが変わったという形跡は見当たらなかったのです。「悩みを打ち明ける」グループは、話したことが役に立ったと感じたものの、実際の幸福度の度合いは、平凡な1日について話した人たち、すなわち「悩みを話さないグループ」と大差はありませんでした。

したがって、嫌なことがあった時に、人に打ち明けるのはあまり意味のない行為になります。しかも、相手にも嫌な思いをさせてしまう可能性があるので、やめておいた方が良いのです。
とはいえ、嫌な出来事は話したくなるというのが人情というもの。いったい、どうしたらいいのでしょうか。

嫌なことは話すよりも「〇〇」こと

ずばり、嫌なことは話すよりも、「書く」ことが有効なようです。ヴァージニア大学心理学部の大石繁宏教授によれば、書くことが与える心理的研究は、次のきっかけから始まりました。

テキサス大学オースティン校のジェイムズ・ペネベイカー教授が
もともとレイプなどの犯罪被害者を対象に、悲惨な出来事から回復するための研究を行っていました。そして、被害者たちに悲惨な出来事について、毎日10分程度書く訓練をさせたところ、対照群よりもそれらのトラウマからの立ち直りが早かったことを発見したのです。
また、血液中のT細胞の数などにも差が出るなどの驚くべき結果を発表しました(『こころのライティング―書いていやす回復ワークブック』より) 。T細胞とは免疫力に関係する細胞ですから、極論すれば、書いただけでストレス耐性までもがアップしたということになります。

なぜ、このようなことが起こり得るのでしょうか。
ペネベイカー教授の実験は数週間にわたって行われましたが、回復に向かった人たちは、「だから」とか「ので」という「理由」を示す接続詞の回数が増えたそうです。 これについて、バージニア大学の大石繁宏教授は次のように述べています。

書くことによりなぜ悲惨な事件が起きたのか、それにどんな意味があったのかなど心の整理ができるからであるらしい。

(『幸せを科学する』 より)

リチャード・ワイズマン博士も「話すことと書くことは大いにちがう」とし、次のように述べています。

話をすると、とりとめがなくなり、あちこちに飛んだり混乱したりする場合が多い。かたや文章には筋道や構成があり、できごとに意味をもたせ、解決へ向かわせる力がある。

(『その科学が成功を決める』 より)

つまり、嫌なことは書くに限るということですね。そうすれば回復します。覚えておいて、損はないかもしれません。