1分でできる「意志の強さ」の鍛え方

ベストセラー本である『スタンフォードの自分を変える教室』の著者であり、心理学者のケリー・マクゴニガル博士は、ヨガの専門家でもあり、本書に瞑想のやり方を記しています。

怠けたくても続けちゃう? 意志力向上トレーニング

「意志の強さ」は「〇〇」の変動でわかる?

本書では、瞑想(マインドフルネス)を続けると、意志の強さが身につくとされているのですが、どうして意思が強いかどうかがわかるのでしょうか。意志の強さに客観的な指標など、あるのでしょうか。

もちろん、このように話題に出すからには、客観的な指標があるわけですけれども、マクゴニガル博士は、人体のある部分の変化が大きいと、意志の強さがわかるとしています。

それは「心拍」です。

博士は、心臓が示す鼓動のリズムがどのように変化するかで、意志の強さがわかるとしています。いわゆる「心拍変動」です。
人間は、息を吸うと心拍数が少し増加します。体内に入ってきた酸素を、少しでも全身に循環させようとする働きによるものです。一方、息を吐くと心拍数は減少します。酸素が少なくなるからです。

この「心拍変動」が高い人、すなわち「心拍変動」が大きく、一呼吸で心拍が変化しやすい人ほど、意志力が強いという研究があるとマクゴニガル博士はいいます。

研究によれば、心拍変動の高い人は、気が散るものを無視したり、欲求の充足を遅らせたり、ストレスの多い状況に対処するのが上手であることがわかっています。そしてそのような人たちは難しい課題に取り組んだ場合、たとえ最初のうちはうまくいかなかったり、誰かに批判的なことを言われたりしても、課題を投げ出さない可能性が高いことがわかりました。

「心拍変動」と意志の強さが関係する理由

ところで、心拍変動がどうして意志の強さと関係してくるのでしょうか。

そこで示唆的なのが心理学者スタンリー・シャクターの実験です。1960年代、シャクターは感情と生理的変化の関係を調べようと実験を行いました。
2つに分けられた被験者たちは、実験前に偽のビタミン剤を投与されます。それは実はアドレナリンで、心拍数と呼吸数が増え、興奮させられるホルモンです。つまり、生理的変化を同じように起こすと、感情や情動も同じように変化するのかを調べようとしたわけです。

第1グループの被験者たちは、陽気な男性がいる部屋に入ります。陽気な男性はフラフープで、遊び始め、次々に冗談を飛ばすなどして、被験者を笑わせます。第2グループの被験者たちは、不満男を演じる男性のいる部屋に入れられました。男はいかにも暗い感じで、アンケートについてぶつぶつ文句を並べています。

その後、被験者たちはアンケートに対し、第1グループの被験者は「ふしぎなほど楽しい気分」と答え、第2グループの被験者は「怒りを感じた」と答えました。同じ生理的変化でも、まったく別の感情が起こっていることがわかります。

このことから、リチャード・ワイズマン博士は次のような因果関係を導き出します。

ライオンを見る→怖くなる→汗をかく

ではなく、

ライオンを見る→汗をかく→自分が危険な状態にいるのを理解する→怖さを感じる

常識では感情が体感変化を引き起こすように思えますが、実際には体感変化が先に来て、脳はその場の状況に合致した感情を呼び覚ますのです。

話をもとに戻しましょう。心拍変動が大きいということは、シャクターのいう体感変化が敏感だということです。つまり、生理的変化をうまく状況に合わせられるということになります。たとえ気が散ってたり興奮していたりしても、やるべきことに合わせて、興奮を抑え、落ち着かせることができるということです。

心拍変動を高めるためには、呼吸を遅らせること

自分の心拍変動は誰でも自分で確認することが可能です。脈を確認しながら、ゆっくり呼吸をしてみると、脈の速さに変化が起こることがわかるでしょう。

「心拍変動」を高めるためには、「呼吸を遅らせること」です。ケリー・マクゴニガル博士は、具体的には次のように述べています。

呼吸のペースを1分間に4回から6回までに抑えること

10秒から15秒に一呼吸のペースですね。

ある研究では、薬物乱用や心的外傷後ストレス障害(PTSD)の症状が緩和したとされています。
なかなか興奮を抑えることができなかったり、逆に覚醒度を上げることができなかったりする人は、普段からゆっくりと呼吸することを意識するといいかもしれません。そうすれば、何事にもつねに最適な神経状態にもっていくことができ、パフォーマンスを上げることができるはずです。
是非、お試しあれ。